■■■ がんサバネット通信 第34号 ■■■

NPO法人日本がんサバイバーシップネットワーク会員のみなさま

事務局でございます。5月も下旬になると、あちこちでホタルが光り始めますね。儚げなようでいて、力強くもある光。みなさまの近くでも光っていますでしょうか?

さて、通信34号は、宇都宮市在住の会員で医師の、田所学さんのエッセイから始まります。誰にでも忘れられない出会いやご縁がありますが、それは、とても細い糸だったりします。でも、つなごうと思ったとき、こんなふうにつながる奇跡もあるのですね。

【目次】—————

1.      リレーエッセイ 「わすれられない患者さん」 (会員 田所 学)

2.      【開催報告】5/18オンラインオープンイベント「就労100連発」 開催しました

3.      【開催報告】shiawase シンポジウム2022の鼎談がYoutube公開されました

4.      【予告】7/9 オンラインカフェ <サバイぶらり― presents “言葉から立ち上る力を” >

■■ 1. リレーエッセイ 「わすれられない患者さん」 会員 田所 学

第二次ベビーブームの頃,子宝に恵まれない若い夫婦がいた.
当時は不妊治療の黎明期.妻は丸一日溜めた尿を検査容器に入れて,毎週,満員電車で「お茶の水医大病院」へ通った.その甲斐あってか,男の子が誕生した.
その時の担当医であったA先生を,「もうひとりの父」として母から刷り込まれて育ったその男の子は,後に医師を志し,お茶の水医大を目指した.

男の子は念願叶い入学したものの,大学内にA先生を知る人はすでにおらず,その足跡をたどることは出来なかった.それでも彼は,臨床実習で産科を回った際に医局を物色し,過去にAという医師が在籍していた形跡を見つけ,名字しか知らなかったA先生の氏名を脳裏に焼き付けた.
それから数ヶ月後,彼は実習で回った外科病棟に,A先生と同姓同名の入院患者がいることを知った.指導教官に,Aさんはかつて当院の産科医だった方では?とさりげなく尋ねると,なぜ知っているのかと問いただされた.彼が観念して白状すると,教官は無言で彼を最上階の特別病室へ連れて行き,「この医学生が先生に話があります」とだけ言い残してその場を後にした.

初対面のA先生は,末期がんで死の床にあった.
彼が自分の母親の名を告げると,A先生は息も絶え絶えに,「ああ,覚えているよ」と笑顔で頷いた.そして,「俺はすごいものを作っちまったんだなあ」と呟き,そのまま目を閉じた.それから数日後,A先生は穏やかに旅立ったという.

あれから二十余年.その時のA先生の笑顔を思い出しながら,今夜もひとり,盃を傾けている.

※がんサバネット通信のリレーエッセイは、どなたでも寄稿できます。600-800字程度のエッセイを、事務局アドレスまでお送りください。My Favorite Placeやサバイぶらりーへのご投稿とあわせて、お待ちしております!

■■ 2. 【開催報告】5/18オンラインオープンイベント「就労100連発」 開催しました

5/18(水, 午後7-9時)に、非会員にもオープンのオンラインイベント「就労100連発!」を開催し、約40名が参加しました。当日は、代表理事高橋さんの司会のもと、参加者から寄せられた131個ものご質問を、いずれも会員の、森本英樹さん(産業医・社会保険労務士・公認心理士)、西條達さん(社会保険労務士)、服部文さん(キャリアコンサルタント)、理事の小島俊一さん(会社経営者)、村本高史さん(人事労務担当者)、辻本由香さん(ファイナンシャルプランナー)が次々と回答していきました。異なる視点からのコメントもあり、病気を持ちながら働くことの複雑さややりがいを語り合う機会となりました。
参加者アンケートでは、「今日の内容と皆さんの熱い思いに触れてすごく勇気をいただきました」「様々な専門家の立場から分かりやすい言葉で解説頂いて参考になりました」「両立支援はどこからでもOK!という言葉に納得」などのコメントとともに、第2弾、第3弾を望む声も数多く寄せられました。 みなさまの声を、今後の企画に活かしてまいります!
当日の記録動画は、近日中に公式サイトの会員限定ページで公開される予定です。

■■ 3. 【開催報告】shiawase シンポジウム2022の鼎談がYoutube公開されました

3月19日に、国際幸福デーに合わせて開催されたshiawaseシンポジウム2022のプログラムの一環として、「がん」と「shiawase」を語り合うオンラインイベントを開催しました。このたびその記録動画がYoutube公開されました。
https://jcsurvivorship.net/shiawase2022

当日は、がんサバネットと慶應義塾大学「からだ館」(山形県鶴岡市)の活動をご紹介するとともに、がんをはじめとするさまざまな病気などの経験と、いまの幸せ(ウェルビーイング)との関係について、代表理事の高橋都さん、副代表理事の秋山美紀さん、そして会員の成田実子さんが語り合いました。どうぞご覧ください!

■■ 4. 【予告】7/9 オンラインカフェ <サバイぶらり― presents 言葉から立ち上る力を>

7月9日(土)午後1:30~3:15に、「言葉から立ち上る力を」と題し、公式サイト内の仮想図書館「サバイぶらりー」にちなんだオンラインカフェを開催します。小説やエッセイ、詩・短歌・俳句、絵本などの作品は、私たちの想像力や創造力を引き出したり、喜びや安らぎ、あるいは勇気や希望などの様々な力を与えてくれたりします。

第1部は「サバイぶらりー」に取り上げたおススメの本を5名のがんサバネット会員が紹介し、本や読書の時間が与えてくれる幸せについて語り合います。

第2部は俳人の野崎海芋さんをお招きし、俳句の面白さや奥深さについて語って頂くと共に、参加者の皆さまや出演者と一緒に実際の俳句作りを楽しみたいと思います。

近日中に申し込みサイトを開きます。会員は参加費無料、一般(非会員)は1,000円です。

お楽しみに!

※6月にはイベントはありませんが、リレーエッセイなどのご寄稿、お待ちしています!

【配信元】—————————–

※当メーリングリストは事務局のみ配信可能となっております。(返信はできません。)

NPO法人日本がんサバイバーシップネットワーク

公式サイト https://jcsurvivorship.net/

問い合わせ先  事務局アドレス

—————————–